真水は0℃で凍りますが、濃い塩水はマイナス20℃くらいまで凍りません(飽和食塩水の場合、氷点はマイナス21.3℃になります)。この性質を利用して、冬に雪が降ったときに、交通事故を防ぐため、道路が凍らないように塩を撒くことがあります。

現代のアメリカは、世界有数の塩の生産国かつ輸入国であり、したがって塩の消費量の多さも世界有数ですが、国土が広くかつ車社会のため、冬には大量の塩を道路に撒いており、最も塩の消費量が多い用途の一つとなっています。

2016年には、アメリカでは、塩の総消費量の44%、2,000万トン以上がこの用途で使われました。この数値は、日本の塩の総消費量(年間800から900万トン)の2倍以上にもなります。

凍結防止のために道路に塩を撒くこと自体は19世紀から知られていましたが、大量に使われるようになったのは比較的近年であり、アメリカでは、1975年の時点で約800万トン、2000年には約2,000万トンがこの用途で使われました。一方、日本でこの用途に塩が使われるようになったのは昭和50年代になってからであり、近年の消費量は、降雪量等によって変動がありますが、年間で50~80万トン程度です。

このように、塩は、口にする以外にも、冬場の交通・物流を支えることでも私たちの暮らしに深く関わっているのです。

なお、塩が道路の凍結防止に効果的なのはマイナス10℃くらいまでであり、それよりも気温が低い場合には他の物質が使われます。

 

参考文献:U.S. Geological Survey “Mineral Commodity Summaries, January 2017”, “Salt End-Use Statistics”、『塩の世界史』R.P.マルソーフ、『塩の事典』橋本壽夫

 

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